第26回 M&Aによる創業者利得
- レポート
- 2007.03.31
創業者が創業者利得を得るための手段は何も上場だけではありません。 その方法として株式売却があり、意外に多く行われているところです。 上場後はもちろん、そこに至る過程において、投資家を始めとする周りからとやかく口出しをされたくない、というタイプの社長にとってはふさわしい手段かもしません。
お客様でも上場の準備をされている会社さんがありますが、ベンチャーキャピタル(VC)からの出資、監査法人のショートレビューに始まり、使うかどうか分からない多くの社内規定の整備、レベルの高い経理マネジャーの中途採用、証券会社との協議、その間に連続する増資やストックオプションの発行、役員の関与している会社の整理をしつつ、常に成長し続ける会社像を具現化、ということを綱渡りのように進めています。
この間に経営陣は営業活動を止めるのもいとわず各方面への説明に追われるため、その準備の過程において資金調達の必要がなくなると「いったい誰のために準備しているのか?」ということになりかねません。融資は返せますが、出資は返せないのです。VCから出資を受けてしまうと、上場したくなくなっても「したくないから」、という理由では止めることができない契約になっているのが通常のようです。
これに対して株式売却は、事業に興味のある会社さんに対して自分の持株を全株売却して、(場合によりますが)経営を退いてしまう、というスタイルを取ります。 後継者不在の会社がその解決策として使うことも多いため、これを仲介する会社もあります。 お客様でも実際にこれですぱっと株を手放して億円単位の創業者利得を得る方もいらっしゃいます。 (非上場株を売却すると20%の譲渡益が即座にかかるため、これを回避するため、相手が上場企業だとこの会社が発行する上場株との株式交換、というスタイルもとられます。)
この方法だと譲渡価額の査定・交渉の行われている数ヶ月間だけは対応に追われますが、それだけで終了となりますので、上場後にも果てしなく続くプレッシャーにも無縁でいられる、ということになります。 (但し、そこで得た資金で次に何をするのか?という贅沢な別の課題が残りますが)
現在も私共のお客様で売り手としてこの交渉過程にある会社さんがあるのですが、買いたいという相手は上場企業であることが多く、中には、売上を作る必要から無理に声をかけてきたのでは?というところもあり、上場していることの辛さを垣間見る気がします。
上場ばかりが注目される今日ですが、自由を求めて起業した、という社長も多い中、一つの成功の形として目指すのも良いのかもしれません。