第27回 特殊支配同族会社の損金不算入について2+余談
- レポート
- 2007.06.30
今年3月決算企業から、特殊支配同族会社(簡単にいえば、社長一族で株式の9割以上、常勤役員の過半数を占めている会社)への課税強化が始まっています。
これは、(これも簡単に言うと、)社長の給与+会社の利益が過去3年の平均で800万を超えている場合に、社長の給与の一部が税金の計算上費用に認められない、というものです。 平成19年度改正では、これが1,600万円となり、対象外となる会社が増えることとなりましたが、この19年3月決算からの1年間に決算期を迎える会社さんでは、対象となる会社が少なからずあります。
私共のお客様でも、この例に漏れず、株式を外部に出すわけにも、誰か役員になる適当な人材がいない場合には決算書に現れる利益に比して多くの税金を申告・納付するようになっています。 この影響は社長の給与が1000万だった場合、約80万円くらいの課税強化となるわけですから少なくないわけです。
この税務理論上の趣旨は、会社が作りやすくなった今、法人にしたからと言って有利な取扱を受けられないようにする、ということなので、理論的には筋が通っているのですが、なかなか納得しがたい、というのが心情のようです。
制度ができた頃からご説明してきたので各社の社長には受け入れてはいただいているものの、これで会社の税引後利益がマイナスになったりするわけで、半分本気で「なんとかするように税務署に言っておいてください」と言われたりします。 (実際、税理士会ではそうした要請をしているようで、19年改正はそうした運動の成果である、とも税理士会関係の新聞でも見ました。真偽のほどはわかりません)
また、このための申告書の作成も結構面倒で、すぐには理解できません。そのため、初めて申告書を書く人・見る人にとって、申告書はどんどん敷居が高くなっていく気がします。
税務計算は簡易であるべき、とされていますが、その逆方向なわけで、改正に携わっている当局の担当者の方々も忸怩たる思いがあるのではないかと想像します。
確かに、簡単すぎると私共の商売がなくなってしまう、という心配もありますが、これでは税金を納める依頼者ご本人に、なぜこのような計算になるのか説明するのさえ難しい、とい状況なわけですから、やはりもう少し簡単な税制というのが良いように思います。
このもう1つの理由として、こう複雑だと専門家ですらミスをしかねない、という状況がさらに進む、ということもあります。 これは、税理士向けの損害賠償保険が繁盛していることからもわかります。 かく言う当事務所も加入しており幸いなことに保険料だけ払ってお世話になっておりませんが、保険事故は結構あるようで、保険料が毎年少しづつ上がっています。
こうしたことに思いを馳せながら、これからも保険にはお世話にならないよう、事務所一丸となって、業務に当りたいと思います。