(メルマガ)交際費
- レポート
- 2018.05.15
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~成功の研究~
知って得する起業とビジネスのヒント
─────────────── 第213号
多様なビジネスの現場に深くかかわる公認
会計士・税理士の立場で、見たこと・得た
知識・感じたことを、特に起業を志す人や
スモールビジネスの経営者の成功につなが
るよう、楽しく・分かりやすくお届けしま
す。
なお、筆者執筆中の(税)ASCのHPの
ASCレポート
との関係は次の通りです。
1)月末:ASCレポートの一部要約版
2)月中:メルマガのオリジナル
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目次
■今回のテーマ:交際費
■まとめ
■編集後記
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「先生、〇〇というサイトはご存知ですか
」
お客様の税務調査で、調査官から聞かれま
した。
はい?
知りませんが何ですか。
聞いてみると、ネット上のキャバクラのよ
うなサイト。
ネット上で女性とTV電話のような形で会
話を楽しむ。
たとえばお客が1時間1万円払い、それを
サイトの運営会社と女性とで半分ずつ分け
て受け取る、というシステムのようです。
そのお仕事をチャットレディと言うのだと
か。
お客様(女性)は、そこでチャットレディ
として過去7年以上、時には年1千万以上
稼いでいたのに無申告だったとのこと。
突然、調査対象だったテーマと大きく離れ
たものが放り込まれ、びっくりです。
お客様は税務署に対して、
今はやっていないし、当時申告はしなくて
良いと聞いた気がする、と回答。
当然それでは済まずに申告をすることにな
りました。
とはいえ、なかなかスムーズにはいきませ
ん。
税務署は簡単に稼いだように言うけど、実
際は大変。
そこが分かっていない。
というところから。
年1千万というのはトップクラスのようで
す。
確かにきれいで頭の回転が良い方ですから
納得はできます。
ただ、ライバルの中には脱いじゃったり、
好きでもない相手に「好き」と言う子もい
るそうで、それはやらないと決めていた分、
大変だったそうなのです。
訪れる男性たちは、ネット上に自分の彼女
を見出すとのこと。
仕事から帰ってくると早速ネットにつない
で「ただいま」と言う。
彼女は「お帰り」と返す。
時にはずっと一緒に夜を明かしてほしい。
要は寝ないでくれ。
と要求されることもあって、結構つらい。
でもそれに応じて頑張る。
とことん付き合うところに価値を見出して
もらって、そこにまた来てくれる。
男性の方は、つなぎっぱなしで1回20万
近くになることもあるようで、彼女にはそ
の半分。
その先での年1千万ですから、軽く言われ
ては困る、というのもわからないでもない
気がします。
そうした税務署との協議を経て
ご本人からは、
「どうしたら良いでしょう。
なんとかなりませんか。」
とご相談をいただきました。
そうした冷静な話に至るまで、私との間で
もひと悶着あったのですが、それも消化し
た上でのご相談です。
検討するにも銀行口座を通して入ってくる
売上はすべて正確に補足されていますから、
経費を積み上げるしかありません。
領収書を取っているわけではないから、記
憶をまとめてもらって税務署と交渉するこ
とにしました。
それを伝ると
「じゃあ頑張ってまとめてみます。」
とおっしゃった数日後、
出てきたものには、
ネット代などは良いとしても、
食事代、高級なお酒、日本代表のユニフォ
ーム、、、
うーん、どうでしょうねこれ。
だって家で1人で飲み食いしたものや、サ
ッカーのユニフォームですよね。
最初、私の段階で落としてもらおうかと思
ったのですが、聞いてみると意外に意味が
ある主張になりそうなのでそのまま、ご本
人・私で税務署との再度の協議に臨みまし
た。
案の定、調査官たちは最初まったく同じ反
応でした。
問題外ですね、と。
これに対してご本人
「食事はお客さんと一緒に食べたものです。
お客さんと一緒に食べた食事は交際費じゃ
ないんですか。
お酒だって、お客さんが誕生日だから高級
な酒でお祝いしてほしいと言われて買った
ものです。
私はお酒はあまり飲めないから飲んでいる
ふりをしながら見えないところで捨ててた
くらいです。
誕生日にいくらこの子は自分にどれだけ使
ってくれるのかって値踏みされるから、そ
こでケチっちゃいけないんです。
それから代表のユニフォーム。
私はサッカーなんか好きじゃないのに、一
緒に代表の試合を応援しようというから買
ったんです。
それが認められないのはおかしくないです
か。」
たしかに、交際費、あるいは交際費でない
としても売上のために直接支出した費用(
要は原価)として認められるべきという考
えかたは一理あります。
2人の調査官も、うーん、と唸りました。
物理的には一人で家にいながら、しかしな
がら画面越しにはお客さんと一緒の飲食や
試合観戦。
そんな場合の取扱いは法令や通達には当然
ありません。
署に帰っての説明も苦しいということは容
易に想像がつきます。
そこで苦し紛れに調査官の1人が
「今回は相手の分を支払ったわけではない
から交際費とは言えませんね。」
と言ってきました。
でも交際費の定義に相手の分まで持つなど
ありません。
そもそも個人事業の場合は売上のために直
接要したものを必要経費としますから、い
ずれにせよ相手の分の勘定を持つかどうか
は要件にないわけです。
そんなことを言い返したりして、税務署と
の協議は、その後何度も続きました。
その過程で態度が気に入らないと言われた
調査官の交代があったり、事情もあって新
幹線での移動もあったりして、そこそこ大
変ではありましたが、なんとか紆余曲折を
経た末にまとまりました。
何やら税金をテーマにした小説みたいです
が実話で、だからこそ、そこそこ疲れまし
た。
今回は、ネットの時代ならではの話だと思
い、一方で今年や去年の話ではないのでも
う良いかな、と思い、書くことにしました
。
テーマとなった交際費ですが、それを定義
したときにはまさかこんな議論が起こると
は誰も想像しなかったでしょう。
現実と解釈は日々進化していきます。
■まとめ
___________________
交際費の定義1つとっても
適用される現実は日々進化している。
■編集後記
___________________
税務調査は最近も頻繁に対応しています。
現在、海外が絡む、多くの会社が関わるあ
るスキームで騒ぎになっており、税務当局
がすごい勢いで動いています。
うちのお客様が巻き込まれたのだか飛び込
んだかは別にしてそこにいらっしゃる関係
上、当然私もその中に。
また何年後かに書くことができるかもしれ
ません。
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