第170回 M&A再考

  • レポート
  • 2019.08.31

M&A
お客様からご相談を受けることが増えてき
ました。
私達には中小のお客様が多いので、主に売
りです。

実際、昨年末からご相談に乗っていたお客
様は5月に数億で売却されました。

売りというと高齢となった経営者の引退が
多いと想像されるかもしれませんが、この
ケースは50代半ばの社長。
まだまだ働き盛りです。

また、最近ご相談いただいたお客様は、い
ずれも社長は40代。

どうやら、起業の出口(エグジット)とし
て、かつてのようにIPO(株式の上場)
ではなく、M&Aによる売却(バイアウト
)を目指している方が増えているのです。

たしかにIPOは大変。
目指すのも、達成するのも、維持するのも

オカネを集め、人材を集め、なんとか上場
すると、今度はたっぷり会社に入ったオカ
ネで儲け続けなければなりません。

オカネなどいくらあっても良いように思え
ますが、必要以上に預かって、「これで儲
けろ」と言われるとかえって大変です。

成功しているビジネスや案件にはそれぞれ
適正規模があり、それを超えて突っ込んで
もリターンは乏しくなりますから。

上場維持のための負担も重い。

先日はベンチャーキャピタル(VC)から
出資を受けた会社の取締役の方から、
調子が出てきたが、本当はIPOじゃなく
て、(かつ、まだM&Aでもなくて)まず
はMBOを目指したいという話も受けまし
た。

MBOとはマネジメントバイアウト。
要は経営陣でVCなどの他の株主から株を
買い取る方法です。
VCから出資を受けた時点で、IPOを宿
命づけられるのですが、そこをあえて見送
りたい。

自由に経営し、その先でバイアウトもあり
かも、と。

私達では、そんなM&Aに向けたお客様に
ご相談いただくと、お話を伺ったり、接し
た事例や考え方などをお伝えし、規模にも
よるのですが、M&Aの仲介会社をご紹介
しています。

M&A仲介会社というのは、私の理解で言
えば結婚紹介所のようなもので、お相手を
見つけて、結婚まで持って行ってくれる会
社。

なので、顔が広い(ネットワークが大きい
)ことが重要です。

買収監査の立会や株式譲渡の手続、関連す
る登記など、特殊な部分もないわけではあ
りませんが、やろうと思えばどこの会計事
務所・司法書士事務所でもできます。

しかし、この「相手を見つけてくる」の部
分は何度M&Aにかかわった経験があって
もまったく違いますから無理です。

そんなM&A仲介会社の方達と定期的に話
すのですが、
上記のような傾向のほかにも、ここ1,2
年の傾向としては人材確保目的のM&Aが
多く見られるとのこと。

人手不足の時代、会社の設備や固定資産、
主要な取引先、業績といった要素以上に、
どんな人材が何人いるかを評価する。

冒頭「5月に数億」と書いた会社も、まと
まった数のエンジニアを抱えている点が評
価されたようで、この会社の見つけてきて
くれた上場会社に譲渡となりました。

最近の人手不足による影響はM&Aの世界
にも大きな影響を与えているようです。

 

■まとめ
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IPOよりもバイアウトを目指す起業家・
経営者が増えてきているようだ。

最近の人手不足はM&Aのあり方も変化さ
せている。

■編集後記
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先日『世界の覇権が一気に変わるサイバー
完全兵器』という本を読んだ、と書きまし
た。
その時書こうと思っていたことを1つ忘れ
ていました。

ノートパソコンのディスプレイの上に小さ
なカメラが付いていることが多いですね。

あれは使わないならシールで隠しておいた
方が良さそうです。
(実際私は付せんを貼っています)

この本の中で、アメリカのシステムに侵入
してきた中国人民解放軍系のハッカーを追
って、アメリカの情報機関が、ルートを逆
にたどってその中国人ハッカーのPCのカ
メラを動かし、彼らの行動を観察するくだ
りがあります。

人民解放軍だから軍服を着ているのかと思
ったらそうじゃなかった、とか書いてあり
ました。

民間人がぼんやり使っているPCのカメラ
など、簡単にやられる可能性がありますか
ら、物理的にふさいでおいた方が良いと思
います。