第42回 「当事務所は税務調査に立会います」について
- レポート
- 2008.12.01
会計事務所と契約するときは、この言葉を確認してからにされると良いと思います。
以前私は、税務調査があったときに会計事務所が立ち会うのは当然だと思っていました。
しかし、前の事務所との契約を解除して当事務所に来られる会社さんの話を聞いたりしていて、そうでもないことが分かり、最初は驚いたものです。
・日ごろからあまり連絡がつきにくく、税務調査のときも同様で来てくれなかった。
・当日来たものの、最初に税務職員に挨拶をしたら帰ってしまった。
これらは、必ずしも月額報酬の高い・安いに直接関係ないようです。
(なお、税務調査への立会いは、通常、月の顧問料とは別料金になっています。)
ちなみに、単なる記帳代行会社は立ち会う資格(税理士資格)がありません。
つまり、立会とは無関係にお任せしているわけですし、調査を前提としないゆえの低料金でもあるわけですから、やむを得ないと割り切る必要があります。
(ただ、以下の話のように、調査を前提としない処理は、結果的には高くつくわけですが)
しかし、資格者がいる会計事務所と契約していたら、当然立会も期待します。
それがこの調子だと、知らなければそんなものなのかと思うし、そうでない場合は驚いたり失望したりするわけです。
実は、日々の会計処理の税務上の取扱は、税務調査のフィルターを通ることで完全に確定します。
逆に言えば、調査のフィルターを通っていないものは、7年経った場合を除き、ひっくり返る可能性が残っているわけです。
そのため、節税と称して、ものすごい税額を下げるようなチャレンジングな会計処理や税務申告を行うことは、短期的にはとても簡単です。
税務署はいったんは受理しますので、窓口でつき返されることはありません。
これにより、通常は2,3年の間、場合によってはそれよりも長い期間、その処理で得した気になることは普通にできます。
(実際、今現在も、意図的かどうかは別にして、結果的にその状態になっている会社さんは結構あるはずです。)
・○○も全部経費で落としている。
・△△までしか認められないことになっているがそれ以上にやっている。
普通は×と言われていることを実は俺はやっている、と得意気に話す人に出会ったら、それで調査が通ったのかを聞いてみると良いと思います。
大体の場合、次のいずれかに該当すると思います。
1.あまり儲かっていない個人事業主である(規模があまりに小さいと、調査対象とならないことも多いようです。)
2.調査を受けたことのない会社の社長である。
3.調査を受けたことがあるが、ほかに大きな修正項目があった会社の社長である。
1.2.は、受けたことがないのですから聞いても仕方がないことがすぐに分かりますが、注意すべきは3.のタイプです。
税務調査では、必ずしも100個の問題があったら全部を指摘して0にするまで修正をさせるわけではありません。
1点で何百万、何千万も動く問題点があったらそこに集中してきます。
その際、その他の数万円程度が動くようなものは見ないか、見ても対象から外すこともあるわけです。
つまり、たまたまほかに大きな問題があったから見逃されたものを、「指摘を受けなかったから大丈夫」と片付けるのは早計ということです。
調査で覆されたものは過少申告加算税と延滞税、悪質な場合は重加算税がついた上に青色申告の取消をされたりして、本来払うべき税額を大きく上回る負担が一度に発生します。
「そうしたコスト負担を負うのは自分だから、グレーでもなんでもやるだけやる」
というのは、ある意味潔いスタンスですが、決してトータルでプラスをもたらしません。
確かに自己責任の世界ですが、勝手な噂や思い込みに頼らず、ご自身の経験と専門家のアドバイスを用いて慎重に対応するに越したことはないように思います。
会計事務所にとって、税務調査への立会いは、長時間拘束されますし、心理的にも負担がかかることがある、あまり楽しい仕事ではありません。
逆に言えば、税務調査を考えなければ、お客様のお望みどおりの決算・申告をしてあげてご満足いただけますし、本当はない方がやりやすいわけです。
しかし、お客様は、究極的には、これをうまく乗り越えるために私達にご期待いただいているわけですから、ここから逃げず、これからもむしろ積極的に関与していきたいと考えています。
(注)私共では、日頃の会計税務のお客様へに対してのみ税務調査の立会いを実施しており、これだけを単発でお請けすることはありません。