第44回 プロフェッショナルとは

  • レポート
  • 2009.02.28

各界で活躍する人たちにスポットを当てて、最後にこう問いかけるテレビ番組があります。

誰もが知る有名人だけでなく
町工場でその人しかできない技術を持つ職人
国際機関で疫病と戦う研究者
過疎地の診療所で1人奮闘する医者
登場人物はさまざまです。

その方々の答えの多くに「逃げない」ということがあります。
また、「言い訳をしない」ということもありました。

つまり、その分野に精通した知識、経験を持っていることはもちろん、その基礎としての態度に、 誰のせいにもしない、最後は全部自分が引き受ける、ということがあるのだと思います。

景気が悪い、顧客が悪い、他部署が悪い、上司が悪い、同僚が悪い、部下が悪い、体調が悪い、
だからしかたがない、というのはプロフェッショナルではないのでしょう。

私自身、特に以前は、自分以外の環境のせいにしていたことが多かったように思います。
最近はそれもかなり修正できてきたかな、と思う一方で、まだまだ反省することも少なくありません。

たとえば、部下の失敗や残念な態度にとてもがっかりすることがあります。
気分に任せて叱ったりすることはしないようにしていますが、腹立たしい思いをすることもあります。

しかし冷静になって考えると、こうした事態はすべて自分が原因であり、反省すべきは自分自身ということに気づき、はっとなります。

なぜなら、その人の採用の決定は自分が行い、教育はすべて自分の方針の下で行われ、業務もすべて自分の指示の下で行われているからです。
誰のせいにもしようがありません。
もし、それで悪い結果が起きたのなら、採用なのか教育なのか業務分担なのか、原因はともかく、いずれにしても自分のせいです。

そう考えると、昔は違和感のあった、大企業のトップが末端の人間の不祥事に責任を取る意味も理解するようになりました。
そのトップは、不祥事を起こした人間と何の面識もないかもしれません。
というか、ないことの方が多いでしょう。
しかし、自分が舵をとっている会社の仕組みの中でそうしたことが起こったことは、仕組みを作って運営しているトップの責任である、というのはその通りだと思います。

このような、最後は自分が引き受けて誰のせいにもしない態度は、企業の成長にも必要だと思います。

商売柄、事業が立ち行かなくなる会社を時折間近で見ますが、そのような会社に多いのも、誰かのせいにする社長の態度です。
景気が悪いとか、部下の○○君がもう少しがんばってくれれば、ということは日常の中にはもちろんあると思います。
これを口にしてはいけない、というつもりはありませんが、事業がうまくいかない真の原因をそこに求めてはいけないと思います。

以前、社長が、「顧客が自社の商品を理解しない」、「仕入先がこっちの指示通りに商品をよこさない」、とか言いながら社業が傾き、
わずかに残った部下に対しても、「営業なんだからもっとちゃんと売ってこないと話にならない」、「管理のあいつは文句ばかり言ってろくに仕事をしない」、 と言い続けて、結局は会社と社長個人が一緒に破産した会社がありました。
残念ながら、その社長は、顧客も仕入先も部下も商品も、全て自分が選んだものなのに、いつの間にか誰かに押し付けられたかのような錯覚を持ってしまったようです。

自分でしたことは自分で引き受ける、逃げない、当たり前ですが難しいことです。
実は、当たり前のことを常に当たり前のようにできることがプロフェッショナルなのかもしれません。

私も少しでもプロフェッショナルに近づきたいと思います。