(メルマガ)万人受け

  • レポート
  • 2025.04.15

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少々達観した言い草になりますが、人生も
経営も、皆に好かれたい・良い関係を築き
たい、と万人受けを目指すとなかなか辛い
のだと思います。

そんなことは不可能だから。

私自身、今振り返ると、独立初期の30代
の頃、無意識にそんなところを目指してい
ました。

そしてその頃、意外なところに支障が出ま
した。
人前で話す時に緊張してうまく話せなくな
ったのです。

周囲からはあまり気づかれなかったかもし
れません。
いや、気づかれたかな。
それくらいのレベルです。

自分の中ではこれまで感じたことのない現
象でした。

今になって冷静に分析すると、その頃は、
何でも知ってます、何でも分かってます、
何でもできます、誰とでもうまくやれます。

本当はそうではないのに、そういう自分の
姿を周囲に無理に見せようと思っていたか
らなのでしょう。

たとえば、どこかの会で挨拶を求められた
ときに気の利いたことを言ってさすがだと
思われたい。
普通の人が戸惑うような場面でもさらっと
こなしている姿を見せたい。

芸人さんでもスベることがあるのに、
うまいことを言うはずが言えなかった。
あるいは、言ったはずがなんかスベッた。
そんなことを気にしていたわけです。

その程度ならまだ良いのですが、そのうち
今まで簡単にこなしていた場面でも緊張す
るようになりました。

商売柄、他社の監査役に就任することがあ
りますが、監査役には定時株主総会冒頭で、
お決まりのセリフを言う場面があります。

事前にシナリオが用意され、その通りに言
うだけ。

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【議長】 それでは事業報告ならびに各議案
の審議に入ります前に、監査役より監査報
告をお願い致します。〇〇監査役お願いし
ます。

【監査役】
監査役の〇〇でございます。第〇期事業年
度における取締役の業務執行全般について
監査を行なって参りましたが、監査の方法
及び結果につきましては、お手元の招集通
知の監査報告書謄本に記載致しました通り、
指摘すべき事項はございません。また、本
総会に提出されている各議案及び書類に関
しましては、法令・定款に違反する事項お
よび不当な事項はないと認めております。
以上、ご報告申し上げます。
-----------------

総会開始直後に議長である社長から振られ
た後、読み上げます。
別に覚えている必要もありません。

聞いている(ように見える)のは取締役た
ちと出席株主。

一瞬で終わるこれのどこに緊張するシーン
があるんだ?
と思うかもしれません。

でも当時の私は緊張していました。
一気に読み上げようとして息継ぎをする場
所が分からなくなって苦しくなったり。

普段、どこで息継ぎするかなど気にしたこ
とがないので焦る。

今は笑えますが、当時はまじめに悩みまし
た。

緊張しないための極意・ノウハウのような
ものを探して試したりもしましたが、うま
くいきません。

そのようなものに多かったのは
・とにかくたくさん準備する
 緊張は準備不足が原因だから
・緊張するのは自分だけではないと思う
 誰でも緊張するものだ。

とかあった気がします。
でも、どれもしっくりきませんでした。
考えてみたら、みんな緊張するから大丈夫、
って言われて大丈夫になります?


それが解消されたのは、自意識過剰が落ち
着いた40代になってからだったと思いま
す。なんでもできるわけないし、多くの人
は自分が何を話しているか、話したかに興
味はない。

上記の監査役の読み上げなど最たるもので、
私以外に原稿を持っているのは社長と事務
局くらい。
もともと誰もちゃんと聞いていないから、
一部飛ばそうが間違えようがわからないし、
たいした問題ではない。

などと図々しく思うようになりました。

そんな調子でやっていると、他の機会でも、
分かる人に分かれば良いか、と気にせず大
きな声で話せるようになりました。

それ以前は、スベることを恐れて声も小さ
い。
聞こえる人が少ないから、なおさら反応が
得られない。
となっていたのだと思います。


お客様との関係もそう。
以前はなんでもうまく受け止めようともが
いていました。

脱税志向の人、
従業員に対して高圧的な態度をとる人

昔はなんとかお付き合いを続けようと模索
したこともありましたが、今はすぐに関係
解消をお願いしています。

そうした人達とうまく付き合うことは無理
だから。
仮に付き合った場合、自分(達)のダメー
ジが甚大。

たとえば、昔はたまにあって、今も、ごく
ごくたまにですがある依頼に、
過少売上、過大経費の決算に対して「サイ
ンしてくれなくて良いから申告書を作って
ください。
税務署には自分で出しますから。」
というのがあります。

迷惑をかけませんから、という趣旨なので
しょうが大迷惑です。

税理士法では、申告書の作成自体に責任が
発生します。
そして、作成したら署名する義務がある。
署名するから責任が生じるわけではないの
です。

処分されたら資格が停止や抹消され、こっ
ちの商売ができなくなります。

昔はそこで提示されるわずかな報酬や紹介
してくれた方との関係を前に悩みながら断
ったりしていましたが、今は悩むまでもな
くお断り。

万人と仲良くはできないし、
万人受けする格好良い自分などいない。

そう思っているから、だいぶ楽なのでしょ
うね。
自分が思う以上に気楽にやっているように
見えるようです。

年を取ることの良い部分なのかもしれませ
ん。


■まとめ
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万人と仲良くはできないし、
万人受けする格好良い自分などいない。

■編集後記
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本文にも関連する話として、『走ることに
ついて語るときに僕の語ること』(村上春
樹著)にこんな一文がありました。

他の商売(ここでは、バーの経営、小説家)
でもそうなのだな、と思います。


「みんなにいい顔はできない」、平ったく
言えばそういうことになる。
店を経営しているときもだいたい同じよう
な方針でやっていた。
店にはたくさんの客がやってくる。その十
人に一人が「なかなか良い店だな。気に入
った。また来よう」と思ってくれればそれ
でいい。
その十人のうちの一人がリピーターになっ
てくれれば、経営は成り立っていく。
逆に言えば十人のうちの九人に気に入って
もらえなくても、べつに構わないわけだ。
そう考えると気が楽になる。
しかしその「一人」には確実に、とことん
気に入ってもらう必要がある。そしてその
ためには経営者は、明確な姿勢と哲学のよ
うなものを旗じるしとして掲げ、それを辛
抱強く、風雨に耐えて維持していかなくて
はならない。
それが店の経営から身をもって学んだこと
だった。『羊をめぐる冒険』のあと、僕は
そういう姿勢で小説を書き続けた。