第56回 相手の立場を理解する
- レポート
- 2010.02.26
「彼のところには大きな仕事を出せないんですよ」
ある社長がおっしゃいました。
「彼のところ」とは学生のときに起業された社長が率いるベンチャー企業
「ある社長」とは、上場企業をはじめとする大きなクライアントからの依頼を受け、複数の会社をとりまとめてプロジェクトを推進するプロデューサー的会社の社長です。
彼は確かに元気があって良いアイデアもあるのだが、お客さんの立場を理解できないから、とのこと。
大きな仕事の場合、お客さんは大企業の担当者でその人はサラリーマン。
その上には上司がいて、上司にはさらにその上司がいて、その先には取締役がいて株主がいる。
それが理解できない。
サラリーマンの気持ちや立場を理解していないというのです。
理解していれば当然に配慮できるであろう、上に通しやすい資料を準備したり、仕事の流れを設計したり、ということになかなか考えが及ばない。
だから厳しいとのこと。
このことから、学生時代から厳しいビジネスの世界に身を投じて磨く経験はもちろん貴重である一方、普通に就職して会社員として生活を送るのも貴重な経験であることがわかります。
(もちろん、いきなり起業しても、相手の立場を理解しようと努力して、大企業相手のビジネスを問題なくされている社長も知っていますので、これが全てに当てはまるわけではありません。)
いずれ起業したいと思っている人は、会社勤めでいる時間を疎かにしがちですが、どんな場面でもそれが活きる局面があると考えて、その時々の時間を大切にすることが重要なのだと思います。
***************************あとがき********************************
珍しく確定申告期間中の税務調査があり、立ち会ってきました。
本文のような相手の立場を理解することは、このような現場でも役立ちます。
現場に来る担当官も実はサラリーマン(またはウーマン)だからです。
(なお、最近はビジネスパーソンと書くことが多いので、サラリーパーソンと書くべきかもしれませんが、一般的でないため、本文でもあえてサラリーマンと書きました。)
以前はあまり気にしていなかったのですが、彼らは署に帰って上司(通常は統括国税調査官)に報告して承認を受けなければ調査を終了させられません。
現場でどんなに言いくるめたつもりでも彼らが上司を納得させられないと調査は終わらないのです。
だから、調査を受ける会社側は、彼らの説明に役立つ資料はむしろ積極的に出してあげるべきです。
たいして秘密でもない、知られても問題ない資料まで出し渋るのは、調査がだらだらと長引くだけで意味がありません。
さらに言うと、明らかに分がないところで現場の担当官と言い争ってもまったく意味がありません。
彼らが渋々持ち帰ったところで上司が承認しないからです。
つまり、(これは調査に限った話ではないですが、)どうでも良いところ、明らかに負けるところは捨てて、本当に守りたいところに重点を置いて対応することが重要なのです。
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