第8回 平成15年度税制改正(交際費要件の緩和、30万円の即時費用化等)について

  • レポート
  • 2003.03.03

平成15年度税制改正の要綱が平成15年1月17日(金)に閣議決定されました。 この後、国会における審議を経て、所要の法律が成立した後に実施されます。 (なお、適用は一般的に今年4月からになりますが、1月に遡って効力を持つものや平成16年からの適用になるものも含まれるため、適用時期については確認が必要です。)

全容は下に示しましたが、特に注目すべきは、影響を受ける企業が多いと思われる下記のポイントかと思われます。

1.交際費の損金にできる範囲の拡大(平成15年4月1日以後開始事業年度から)  交際費を400万円まで認められる企業:資本金5千万円以下→資本金1億円以下  上記で認められる損金算入割合:80%→90%

2.費用化できる資産範囲の拡大(平成15年4月1日以降取得分から)   中小企業について、30万円未満の取得時全額損金算入(即時償却)   (なお、償却資産税の対象範囲は、今のところ、変更がない模様です。)

3.消費税関係(平成16年4月1日以後の課税期間より(総額表示は同年4月1日より))
免税事業者となる課税売上高   :3千万円→1千万円   簡易課税が選択できる課税売上高:2億円 →5千万円   消費者向け取引につき消費税の総額表示の義務付け
ここで総額表示とは、いわゆる税込表示のことでつぎのようなスタイルとされています。        10,290円(本体価格9,800円、消費税等490円)
10,290円(うち消費税等490円
10,290円(本体価格9,800円)
10,290円(税込)
10,290円
9,800円(税込10,290円)
(ちなみに、「9,800円+税」という表記は税額を数字で示していないことから認められない模様) なお、税制改正の詳しい内容は、財務省のホームページで紹介されています。

相続税・贈与税
○  相続時精算課税制度(仮称)の創設  20歳以上の子が65歳以上の親から受ける贈与について、贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する制度を、現行の制度(暦年課税)との選択制で導入する。(贈与時の非課税枠は累積で2,500万円、非課税枠を超える部分について税率20%で課税)
○  相続税・贈与税の税率構造の見直し ・  相続税について、最高税率を50%(現行70%)に引き下げるとともに、税率の刻み数を6段階(現行9段階)に簡素化し、必要な税率区分の拡大を行う。 ・  贈与税(暦年課税)についても、相続税に準じて見直す。   ( 注)上記2つの改正は、平成15年1月1日以後の相続又は贈与から適用する。
○  住宅取得資金に係る相続時精算課税制度の特例の創設 ・  住宅の取得又は増改築に充てる資金を贈与により取得した場合には、65歳未満の親からの贈与についても相続時精算課税制度を選択できる特例を創設する。 ・  住宅の取得又は増改築に充てる資金を贈与により取得した場合には、相続時精算課税制度に係る非課税枠を3,500万円に拡大(1,000万円上乗せ)する特例を創設する。   ( 注 ) これらの特例は、平成15年1月1日から平成17年12月31日までの間に贈与により取得する金銭について適用する。
○  現行の住宅取得資金の贈与の特例(5分5乗)は、平成17年12月31日までの間、経過措置として存続する。 ( 注 ) この経過措置の適用を受けた場合には、その適用年分以後5年間は、上記の相続時精算課税制度を選択できない。

金融・証券税制
○  上場株式等の配当、公募株式投資信託の収益分配金、上場株式等の譲渡益について、20%(所得税15%、個人住民税5%)源泉徴収のみで納税が完了する仕組み(申告不要制度)を導入する。
○  「貯蓄から投資へ」の対応を一層明確化するため、上記について、今後5年間10%(所得税7%、個人住民税3%)の優遇税率を適用する。
○  公募株式投資信託の償還(解約)損と株式等譲渡益との通算を可能とする。

消費税
○  中小事業者に対する特例措置 ・ 事業者免税点制度の適用上限を1,000万円(現行3,000万円)に引き下げる。 ・ 簡易課税制度の適用上限を5,000万円(現行2億円)に引き下げる。(注)上記の改正は、平成16年4月1日以後に開始する課税期間について適用する。
○  申告納付制度等  直前の課税期間の年税額が4,800万円(地方消費税込6,000万円)を超える事業者は、中間申告納付を毎月(現行3月ごと)行うこととする。(注 ) 上記の改正は、平成16年4月1日以後に開始する課税期間について適用する。
○  消費税法において、事業者がその相手方である消費者に対して商品の販売、役務の提供等の取引を行うに際し、予めその取引価格を表示する場合には、消費税額(含む地方消費税額)を含めた価格を表示することを義務付ける。(注 ) 平成16年4月1日から適用する。

酒税・たばこ税
○  酒類間の税負担格差の縮小  ビール・発泡酒(麦芽比率25%未満)、清酒・果実酒、清酒・合成清酒、リキュール類・甘味果実酒等の間の税負担格差を4分の1縮小することとし、発泡酒、果実酒、合成清酒、甘味果実酒等の税率を引き上げる。  ( 注)平成15年5月1日から実施する。
○  ビールに係る酒税の税率の特例の創設  小規模なビール製造業(いわゆる「地ビール」)について、創業支援のため、3年間の特例措置を創設する。(酒税額を20%軽減)
○  たばこ税の税率を1本当たり0.82円(国・地方合計)引き上げる。  ( 注)平成15年7月1日から実施する。

その他
〔NPO税制〕
○  認定NPO法人の認定要件を緩和するとともに、認定NPO法人についてみなし寄附金制度を導入する。
〔石油税及び電源開発促進税〕
○  LPG及びLNGに係る石油税の税率を引き上げるとともに、新たに石炭に課税する。また、電源開発促進税の税率を引き下げる。
〔自動車関係諸税の特例〕
○  揮発油税及び地方道路税並びに自動車重量税について、税率の特例措置の適用期限を5年延長する。 (注 ) このほか、自動車重量譲与税の譲与割合を3分の1(現行4分の1)に引き上げる。
〔その他〕
○  租税条約の規定に基づき条約相手国から情報提供要請があった場合に、一定の場合を除き、当該情報提供のために税務当局が質問検査を行うことができることとする規定を整備する。