第151回 20億≠5億×4

  • レポート
  • 2018.01.31

私たち会計税務の世界で仕事をしていて当たり前だと思っていることも、お伝えすると予想以上に驚かれたり、感謝されることがあります。

先日はお客様と、弊社担当とともに食事をご一緒させていただきました。

私と同年代の社長なのですが、ちょうど良い具合にいくつも良いテーマが集まってきていて、大きくなりそうな楽しみな状態です。

40代後半というのは、意識していたか無意識であったかは別にして、それ以前に撒いてきたタネが収穫の時期を迎えるときなのかもしれません。
(同じ年代ですから、私自身もあやからないといけないのですが。。。)

社長は、これらの事業を育てて、20億ぐらいで会社ごと外部に売却できたら最高だな、どう思われます?とおっしゃっいました。

私も外部に売却できる可能性は十分にありそうだな、と思う一方、

「社長、でも20億で1社売るよりも、5億で4社、あるいは4億で5社売る方が簡単ですよ」と言いました。

え?どうしてですか。
と社長。

意外だったようです。

ここから先は聞けばたいした話ではないのですが、20億だと買い手が限られてしまうからです。

20億となると、上場企業でも時価総額が20億に満たない会社があるくらいですから、ハードルが高い。

また、仮に買おうとなっても、当然ながらその決定には4億や5億よりも上位の決裁が必要となって話がまとまりにくくなります。

一方で、4億、5億。
このくらいであれば未上場の会社でも多数買い手候補が出てきます。

中小企業のM&Aを多数扱う(株)日本M&Aセンター(東証一部)の担当者と話すことがありますが、3~5億というのは非常に扱いやすい、案件が動きやすいレンジのようです。

つまり、事業が一体として20億であるならしかたないのですが、今回の場合は複数事業で20億という話ですからなおさら分けておいた方が良いわけです。

「なるほど。たしかに言われるとそうですね。」
と社長

次に
じゃあそうした会社を何社か作るにしても
(A)今の会社の下に子会社を作る
(B)自分個人の下に兄弟会社として作る
どちらが良いとかありますか?
となりました。

これも、会計事務所に限らず、こうした話に触れている方であれば100%迷いなく即答するテーマなのですが、答えは(B)です。

(B)なら譲渡益が分離課税約20%で、残りが直接個人に入ってくる。
一方で、(A)であれば、譲渡益が会社に生じ、それも億円単位となると30%後半の法人税等がかかり、さらにそれを個人に移転する際に50%超の所得税・住民税がかかります。

ああそうなんですね!、と社長。

日頃そうした話に触れている人には当たり前のことかもしれないが、そうでない自分にとっては非常にためになった、良かった、とのこと。

私もそこまで喜んでいただけて良かったです。

 

会社を売ることは昔ほど珍しくなくなりましたが、経営者でも複数回経験される人はあまりいないと思います。

あまり経験しない、ということであれば、相続などもそれにあたるでしょう。
さらに言うと、数年に1回の税務調査。
さらに言うと年に1回の決算や年末調整。

正確な使い方ではないかもしれませんが、これも情報の非対称性と言うのかもしれません。
こうしたところに私たちがお役に立てる場所があるのかな、と再認識しました。

 

*************************** まとめ ********************************

20億で1社売るよりも、5億で4社売る方がかんたん

 

***************************あとがき*********************************

明治大学という大学があります。
私には何の縁もないのですが、明治の母校愛・仲間意識は強烈ですね。

明大ご出身の社長が、取引先の担当者が明治であるだけで気を許す、というケースをたまに見ますが、他大学でこのようなことを見たことがありません。
少なくとも私の場合、同じ大学です、と言われただけならその時点でその人はほぼ他人です。

本稿の社長はお子様が明大付属。
成績が良いので塾では早稲田も狙えると言われているそうですが、本人は明治以外眼中にないとのことでした。

明大ご出身ではない社長は首を傾げていて、
私は私で、え、中2でもう明治魂のようなものが?!と驚きました。

もちろん良い学校だとは思うのですが、何がそうさせるのか常々興味深く思っています。
もしその理由をご存知の方がいたら是非教えていただきたいと思います。