第34回 公認会計士と税理士との違いについて
- レポート
- 2008.02.27
世の中には○○士なる商売がいくつかあります。
会計税務に関するものには、公認会計士と税理士とがあるのですが、その違いはあまりよく知られていないようです。 ただ、それもやむをえないのかもしれません。、 一般の人ならともかく、私共の事務所の就職面接で、「将来税理士になりたいので・・・」と言った学生に「なぜ公認会計士ではなく税理士を選んだのですか?」と聞いたら、両者の違いを知らなかった、ということさえあったからです。 さすがにこれはどうかと思いますが、ここで簡単にまとめたいと思います。
まず、公認会計士も税理士も会計の専門家とされていますが、公認会計士は特に財務諸表監査を独占的に行うことが認められています。 財務諸表とは、会社の決算書とイコールです。 つまり、会社が勝手に「うちは儲かっています」という決算書を発表しても、外部の投資家は確かめようがありません。
それを主に投資家に代わってチェックする独立の専門家、という役目を持つわけです。 したがって、財務諸表監査は上場していたり、それに準ずるような比較的大きな会社を対象に行います。 また、昔のように公認会計士が一人で行うことはなく、多くの監査は公認会計士だけで構成される監査法人という組織で行います。
一方、税理士は税務の専門家とされており、税務申告の作成や相談は税理士しかできません。 税務署からの封筒に、税理士でない人に税金のことを任せてはいけません、注意しましょう、といったことが書いてありますが、これは税理士法によって決められているからです。 (ちなみに数年前から、税理士にも税理士法人という組織形態が認められるようになりました)
分かりにくいのは、公認会計士には税理士の資格がついてくるところです。 (町で見かける「会計事務所」も、実は所長が税理士の場合、公認会計会計士の場合、その両方である場合、の3通りがあります。)
ただ、公認会計士資格のまま税理士の仕事はできないので、公認会計士も税務を行う場合は税理士としての登録をしなければなりません。 税理士としての登録とは、税理士会に入会して会費を払うことを意味しており、このような位置づけの会計士は、日本公認会計士協会と税理士会の両方に登録して、会費を払って活動しています。
以前は公認会計士のまま税理士業務もできたのですが、数年前からこのような制度になっています。 このようなことになったのは、税理士会の政治力が公認会計士協会よりも強いことも背景にあるようです。 税理士の歴史と数、それが支援する政治家の数は会計士を上回っていて、おのずとこのような関係になっていると考えられます。
また、両会の関係は必ずしもうまくいっていないようで、税理士会から送られてくる会報、公認会計士協会から送られてくる会報、双方に互いを批判する記事が出たりすることからも分かります。 「税理士会(会計士協会)はこんなことを言っているが、本会としては○○と考えて活動しているところです。」等々 両会に会費を払っている立場からすると仲良くやってほしいところなのですが、職域を守る・拡げる、のは各会の重要な使命ですから、そうもいかないようです。
このような隣接する士業間の対立は税理士会と会計士協会だけではないようで、以前は、税理士会と社労士会が大きな対立を起こしたことがありました。 これからも公正な競争と一定の業務品質確保の狭間で、いわゆる「士業」を取り巻く環境も変わっていくことと思います。
保護された中とはいえ、競争は激しくなってきたのだと思います。 また、そもそも何のために保護されているかを考え、この変わりゆく環境の中で、選ばれるだけの実力・体力・価格競争力を高め・維持すべく日々精進していきたいと思います。
(参考) 保護されている最も大きな理由は、業務品質の確保と必然的に持つ自制心への期待なのかな、と考えます。 業務品質の確保は、紛れもなく、試験をパスして担保される能力です。 そして、自制心への期待とは、良い言い方をすれば倫理感や使命感になるのかもしれません。 ただ、もっと根本的なことを言えば、仮にその人に高い理想や使命感がなかったとしても、苦労して取った資格をもって一定の保護をされて仕事をしている場合、無茶なことをして資格を剥奪されるようなことはしない、という自制心が生じます。 これらは、資格なしで税理士業務ができるようになった場合、代わる税務コンサルタントに同レベルの業務品質と自制心が期待できるかどうか、という点を想像すると分かりやすいかもしれません。