第181回 持株会社化と家族信託(その1)

  • レポート
  • 2020.07.31

 

お客様から持株会社化のご相談。

担当が検討している件に首を突っ込みまし
た。

持株会社化とは、
ある会社の株式を個人で直接保有するので
はなく、それを保有する会社(持株会社)
を通して保有することを言います。

私がA社を持っているとして、
B社を設立して持株会社化する場合、次の
ようになります。

(現状)


A社

 

(持株会社化後)


B社(持株会社)

A社

ここでB社の下に、A社以外にも、その兄
弟会社が何社もぶらさがる格好になるので
あれば、経営管理上有用に使われます。

たとえば、
・合併の前段階の緩やかな経営統合に
・各子会社が別業界に属していて、
従業員の処遇やら制度やらを統一しにく
い場合に
・事業を放出したり買い入れたりしやすい
ように
といった具合です。

しかし、子会社が1社しかないこの場合、
何の意味があるのか?

目的は相続税対策です。

ここ数年、たまに銀行から持ち込まれるも
ので、今回もきっかけは銀行が社長に持ち
込んできたものでした。

それを受けて私共にご相談が来たわけです。

たしかに、A社が調子よく稼いでいる会社
だと、A社株式の価値は高まっていき、そ
れがそのまま将来の相続財産になります。

それが、B社を通して保有すると相続財産
はB社株式となります。

そして現行のルール上、たしかにこの方が
評価が下がります。

というか、将来の株価上昇を一定割合抑え
られます。
(上がり方が緩やかになるだけで、上がら
ないわけではありません。)

これに対してお客様のニーズを再確認する

(1)株価が低いうちに子供に渡したい。
でも、
(2)実権は手放したくない。
でした。

銀行の案では、
(1)に対して持株会社化
(2)に対して種類株式
で応えることになっています。

ただ、上の通り、(1)に対して持株会社
化は悪くはないのですが不十分

また(2)は、拒否権付株式のような特殊
な株式を発行するので、発行も管理も必要
で、最終的な整理も先々に送る部分があり
ます。

「株式移転(※)で持株会社化するととも
に黄金株(種類株の1つ)を発行して相続
税対策」

(※)株式移転=合併や分割といった組織
再編の一手法

何かスペシャルなことをやっている気がし
て、そこに満足される社長もいらっしゃる
のですが、ベストかどうか。

銀行さんは、株の買取資金を融資できるの
で良いのかもしれません。

私達会計事務所も、1社顧問先が増えて料
金をいただけるので良いかもしれません。

ただ、会社さんには結構な金額のアレンジ
のフィーと二社を管理し続けるランニング
コストが発生します。
問題の最終解決も一部で先送り。

社長にとってベストかどうか。

そこで、より良いと思われる提案として考
えたのが、家族信託(民事信託)を使った
方法でした。

家族信託(民事信託)とは、比較的新しい
制度です。

以下4年前の「あとがき」では、

第132回 引き際


「当てられたら嫌だな」という学生の頃の
ようなに気持ちを久々に味わいながら受け
た長時間のケーススタディの様子を書きま
した。

その時のテーマがまさに家族信託。

家族信託は、司法書士さんの業界では、主
に痴呆対策で流行っていますが、税理士業
界でも今回のように承継対策として見出さ
れてきているもの。

法的に完全にセットする必要がありますの
で、今回の件も司法書士さんと連係して公
証役場で成立させることになります。

慎重なお客様は、この私達の提案を持って、
今度は別の金融機関に意見を聞いたとのこ
と。

結果として、これが良さそう、ということ
になり、進めることになりました。

以上、今回は、じゃあ家族信託ってなんだ
?、というところまで行きませんでしたが、
次の「持株会社化と信託(その2)」では、
そちらの話をしようと思います。

■まとめ
___________________

相続税対策のための持株会社化。

状況によっては
もっと良い方法があるかもしれません。

 

■編集後記
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いつものように社員とランチミーティング
をしていました。

私は、明確にシフトを決めて、日々順番に
違うメンバーとご飯を食べるようにしてい
て、その日は新卒入社3年目の社員でした。

どういうわけかお年玉の話になったのです
が、ある時期(幼稚園かせいぜい小学校低
学年)まで、五百円札でもらうことが多か
ったと言って驚かれてしまいました。

今調べたら、平成6年まで発行されていた
ものの、昭和57年登場の5百円玉と役割を
交代したというのが実態のようです。
https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/valid/past_issue/pbn_500.htm/

若い人にとっては歴史の世界なのでしょう。

今度、疎開したことがある、とか言ってや
ろうかな。
すごいですね、とか言われそうな気がしま
す。