第41回 レインメーカー

  • レポート
  • 2008.11.01

もう何年も前に公開されたものですが、「レインメーカー」という映画があります。
(レインメーカーとは、雨のようにカネを降らせる人、弁護士もののこの映画では、事務所に大金をもたらすエース弁護士、という意味で使われているようです。)

この話は、マットデイモン扮するロースクールを出たばかりの新米弁護士が、ひょんなことから大手保険会社と戦うことになる話です。
保険会社は、貧しい人達から保険料を集めながら、保険金の請求にはのらりくらりと応じません。
主人公は、本来なら保険で受けられるはずの治療を受けられないまま死んでいく少年とその母親を見かねて立ち向かうわけです。

相手は、一流の弁護士事務所と契約し、何人ものやり手弁護士がチームで待ち構えています。
一方、こちらが所属する弁護士事務所は、やる気のない上司達は海外に遊びに行ってしまい、無資格ながら法廷での立ち回り方をかろうじて知っている先輩と自分の2人だけの心細い状況です。
このような中、主人公は、その先輩とともに手探りで奮闘します。
無資格の先輩は法廷には立てませんから自分が立つわけですが、
異議の申立のしかた自体分からないので、裁判官から注意を受けて失笑を買ったりします。

そんな奮闘の描写の1つに、相手の一流弁護士事務所に1人で出向くシーンがあります。
事務所は大きく高級で重厚です。
間接照明で照らされた少し暗い会議室の中央には、輝く立派なテーブルがあって、そこに通されます。
自分は1人、その周りを相手事務所の経験豊かな弁護士達が囲み、交渉を始めます。
最初から相手は馬鹿にした態度でプレッシャーをかけてきます。
足元を見ながら軽く取引を持ち込んできます。
そんな押しつぶされそうな状況の中、主人公はなんとか彼らの要求をはねのけます。

私がこの映画を見たのは、ちょうど会計業界で独立したころでした。
自分1人でやっていけるのだろうか?
世の中には自分が足元にも及ばないようなやり手の会計士や税理士、さらには当局のお役人が、この映画の世界のように自分を待ち構えているのではないか?
心細い心境を主人公に重ねました。

実際にはそこまでのことはなかったわけですが、今でもそのシーンを思い出すと当時の自分の不安だった心境を思い出します。
さすがに今は、そのような、自分の実力が世間の標準とどれだけ離れているのか分からない、何を知っているべきで、何を知らなくて良いのかすら分からない、という状況にはありません。
しかし、そんな気持ちだったからこそガムシャラにがんばったのも確かなわけで、
そのような気の持ち方というのをたまに思い出して、現状で満足しそうな自分を時折戒めています。
また、当時の自分以上の覚悟をもってこれから起業される方の心情を察するようにしています。

まだご覧になっていない方のために映画の結末はあえて書きませんが、主人公はこの経験を経て大きく成長します。

どこかで読んだ本に、苦しいときは自分が成長しているときだ、というようなことが書いてありました。
それを乗り越えたとき、これまで以上に頼りがいのある、役に立てる人間になっているのだと思えば、苦しさも前向きにとらえられるのかもしれません。

当時と状況は違っていますが、苦しいとき、悩むときはいまだに多々あります。
(というか、いつも何かを気にかけています。)
そんなときは、自分が成長していると信じて、これからもがんばっていこうと思います。