第49回 日本人は変わったか
- レポート
- 2009.07.27
最近、「サービス発展途上国日本―“お客様は神様です”の勘違いが、日本を駄目にする」という本を読みました。
著者は海外でホテルマンとして活躍してきた方なのですが、その視点から日本のサービス業を見つめ直しているものです。
日本のホテルは優秀なスタッフに多くを依存していて、その現状を問題視しています。
それに関して、次のようなことが書かれていました。
アメリカのホテルはスタッフの劣性を補うためのシステムを発達させてきた。
一方、日本のホテルは優秀な人材があったために、これに頼りすぎてシステムを磨くことを怠った。
あれ?どこかでこんな話を読んだな、と思い返してみたら次の本でした。
「日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条」
この本は、日本がなぜ太平洋戦争で負けたのかを詳細に分析しています。 その敗因の1つとして次が掲げられていました。
日本は精兵主義を取った軍隊だったが、精兵がいなかった。
日本は、明治以来よく鍛錬された、精神力の高い兵が揃っている前提で戦争を進めていたが、こうした精兵は戦争の進行とともに減少していき、やがて精兵ではない者に同じことを求めて戦われることとなった。
一方のアメリカは、精兵でなくても対応できるシステムを整備して対抗してきたというのです。
誰でも簡単に動かせて標準化された武器など、個人的な能力やがんばりに依存しない仕組みが随所に取り入れられていたわけです。
日本人は基本的に個々人ががんばり屋さんなので、どうしてもシステムの整備を怠ってしまう。
戦争のときと変わっていません。
私達日本人が現代を生きて、ビジネスを進めるに当たっても気をつけるべき点だと思います。
このほかにも、先の戦争の失敗は色々なことを考えさせてくれます。
もう1つ日本人として注意すべき点は、上記に通じますが特に精神面を重視し、根拠のない自信で調子に乗るところだと思います。
日露戦争で勝ったことに慢心し、それが行き過ぎて一番大事な武器が世界レベルにないこともあまり気にしていませんでした。
以前読んだ司馬遼太郎の本に次のようなエピソードが書かれていました。
大戦前、ソ連の駐在武官が日本の陸軍の軍事演習を見る機会があった。
日本は、良いところを見せてやろうと張り切って演習をして見せたのですが、その駐在武官にこう言われたそうです。
いくら秘密にしたいからって、昔の武器ばかり出してきては困ります。
ちゃんといつもやっている演習を見せてください、と。
考えさせられますね。
その後、日本は根拠のない自信をもったまま戦争に突入していきました。
そのときの各方面での意思決定がどうだったかは他の本でも読みますが、要は自己分析も相手分析もしないで事に当たることが多かったようです。
(もちろん、末期には分析しても手の打ちようがなかったというやむを得ない事情はありますが。)
このようなことを組織論の面から研究したものに次のようなものがあります。
「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」
日本人の悪い面だと思います。
自分もこれを持っているなぁ、と思ったのは、星野ジャパンが北京で負けた時でした。
私は、プロばかりだし当然金メダルでしょ、と思っていました。
たぶん、当の星野監督もそうだったのではないかと思います。
ボールや審判の違いを現地で憤慨していたわけですが、本当は行く前に準備すべきでした。
聞くと韓国は、国内リーグをオリンピックの公式球でやるほど準備していたとのこと。
孫子も言うように 「敵を知り己を知れば百戦危うからず」 です。
逆に、敵も知らず己も知らないでやる勝負はギャンブル以下になってしまいます。
日本人の本質は変わっていないようですから、お互い先人がしてきた失敗に思いを馳せて気をつけて、より高い成果を上げていきましょう。
今回は成功以前に、失敗しないための留意点を考えてみました。
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