第63回 東京国税局資料調査課

  • レポート
  • 2010.09.29

「やっと終わった」
ある日の夜の11時半でした。

前の週の月曜朝から始まった税務調査が終わった瞬間でした。

先日お客様の下に、東京国税局資料調査課(通称リョウチョウ)の調査が突然入りました。

言っておきますが、税務署の調査とは全然違います。

査察部に準じる能力を持つとも言われる人達が、
FBIが地元警察を使って事件に当たるように
「踊る大捜査線」で本庁キャリアが所轄を使って捜査するように、
数人で、それを上回る数の所轄の税務署員を引き連れてやってきました。

私のゆっくり流れるはずの1週間は月曜朝のお客様からの電話で一変しました。
あらゆる予定はキャンセルとなり、夜は遅くまで立会いが続きます。

会社の経理の方は、
「これは査察ですか?」と私に尋ねましたが、違います。
金庫や机は同意の上で開けられますし、PCのデータも一応断った上でコピーが行われます。

ただ、少々参ったのはメールが押さえられて、その1つ1つが分析されたところでした。
ある社内でやり取りされたメールは重要な証拠とされ、その真意や背景が問いたださた上で調書にされました。
私の隣では担当者が、職位、氏名、住所、生年月日を読み上げられた上で供述について相違ないかを確認の上、署名・押印が行われています。

そんな中、人払いがされ
「先生よろしいですか?」と私だけが部屋に残されて質問されることになりました。

あれ?なんか変な雰囲気だな、と思いながら対応します。

「こちらにコピーがあるのですが、昨年の○月○日、先生から社長に送られたメールです。お手元のパソコンでご覧いただくことはできますか?」

え?何を送ったんだっけ?
と探します。
ありました。

「社長さんに対して、ご質問にお答えになっている部分がありますよね。ご説明いただけますか。」

それは、社長がこのようなことを実行した場合の税務上のリスクは?
というものに私が答えたメールでした。

その一文に、これを行うと日本の国税当局は課税しにくくなると思うが(中略)事実上実行は不可能だからやめときましょう、というようなくだりがありました。
「日本の国税当局が課税しにくくなるということですが、どのような意味で書かれたのでしょうか?」

と若手の実査官(調査官ではありません)が聞いてきます。

色々なアイデアに対してできるかできないかの検討を行うことは良くあることなので、言葉の通りである旨を伝えます。

そもそも基本的に、どうせわからないから脱税しちゃいましょう、というような話をすることはないし、社長ご自身それを求めているわけではないので、大丈夫なのは分かっているのですが、夜も更けた静かな会議室でこんな質問されていると、参ったなぁ、という感じになるわけです。

そんなこんなで1週間で終わりました。
本当はもっともっとたくさんあるのですが、私以外の具体的なことは書くべきではないのでここまでとします。

ただ、特に最終日夜の会社側と国税との最後の詰めの打ち合わせは、私も社長に全面的にお任せいただき、会社サイドに立って結構がんばりました。
そのため、事務所のプロモーションビデオにして、できれば皆さんにも見ていただきたいぐらいなのですが、守秘義務の塊のようなミーティングなのでそれもかないません。

ただ、振り返ってみて彼らは優秀でした。
何かをひけらかしたりえらぶったりすることはまったくありませんが、接していれば分かります。
また、夜も厭わずがんばっていました。

敵でなければ一緒に仕事をしたいくらいの人達でした。

*************************** まとめ ********************************

リョウチョウには気をつけろ。
彼らは優秀だし、5時には帰らない。

***************************あとがき**********************************

実はこんな調査の最中に第2子が誕生しました。
会社の方からはもちろん、国税の方々からもお祝いの言葉をいただきました。

そのため、税子と名付けました。
(ウソです)