第138回 新卒

  • レポート
  • 2016.12.31

「来年は新卒の採用を止めたらどうか?」

毎月社員に改善提案の提出を求めているのですが、その中に、今月はこんなものがありました。

ある時を境に事務所は急成長したが、先輩社員が教育しながら業務に対応するのは大変。
経験の浅い者によってサービス低下を招いていないか?
これで他社との差別化は難しくなっていないか?
どうせなら、その分即戦力になる中途を取った方が良い。
とのこと。

確かに一理あります。
また、触れられていませんでしたが、
社内ルール上、賞与の配分原資にも影響するので、先輩社員の立場からそう思ってもやむを得ない面もあります。

でも私は立場が違います。
なので、迷わずに却下しました。

まずここで触れられている
・事務所の急成長
・他社との差別化

どちらもたいしたレベルではありませんが、
もしこれがあったとしたら、それは地道に続けてきた新卒採用のおかげだと思うからです。

会計事務所業界は常に、今すぐ使える経験者を取り合ってきました。
それにより、いつも離職率の高さに悩まされています。

事務所では常に引継が行われ、お客様は自社の情報をよく知る担当者が(頭に自社の情報を記憶したまま)辞めて他に行ってしまう、引継が漏れて話が宙に浮いてしまう、といったリスクを常に抱えています。

ただ一方で、この業界での経験者重視は無理もない面もあります。

新卒採用は、2016年の今であれば、2018年4月新卒の準備をしています。
彼らが多少なりとも戦力になるのは2018年10月頃。
つまり、2年後の戦力を今から百万単位のオカネを求人サイトに払って準備するわけです。

小さいプレイヤーが多い会計事務所業界では、一般にそんな悠長なことはやってられません。
(国内の会計事務所の90.1%は9人以下、19人以下までを対象に広げたら98.0%がこの中に入ります。)

忙しくなったらすぐに使える人を採る。
これにはやむを得ない面もあるのです。

そんな業界で私はあえて、独立した時から細々と新卒採用を続けて15年以上が経ちました。
今は当時の新卒達も30代後半になって幹部社員になってくれています。

その過程で、自分が学び、新人に教えることでまた学ぶ、ということを組織として継続してきました。

新人を抱えながらお客様に対応する組織であり続けたわけです。

つまり、これは当事務所にとっては差別化を阻害する要因であるどころか、これ自体が差別化ポイントであって、「ある時を境に成長」があったのは、新人経営者である私と新卒2、3名でこじんまりやっていたものが、年を重ねて組織として一定の実力をつけたからなのだと思っています。

私1人がどんなに頑張っても、社員の1人がどんなに優秀でも、それを活かせるメンバー・組織・制度が必要で、それが年月とともに整ってきたのだと思っています。

つまり、ある面では冒頭の先輩社員の言葉が正しいのでしょうが、リストラをやっているわけでもないのに、これまで継続してきた新卒採用を停止するのは、長期的視点に立ったらあり得ません。

組織の永続性を目指すなら、無理してでも若い世代を入れていく必要があります。

そして、上司・先輩・同僚・後輩がいる方が人は成長するし、私はそんな組織を作りたいと思ってやっているわけですから、そのためにも必要なのです。

短期的に儲けたければ、今使える人と儲かる仕事だけ残せば良いわけですが、そんなことをしても目指すところと違います。

そもそも
子供だったことのない大人がいないのと同様、
未経験者だったことのない経験者もいません。

自分は他人から指導してもらい経験を積むだけ。
あとは経験者だけで組んで一緒に年を取っていく。
やはり違う。

いずれは自分の子供たちを含む、将来世代の活躍を期待したい。

今回は、完全に社内の話でした。

業界や立場や目指す方向が違えば、まったく当てはまらない話かもしれませんが、最近深く考えたことなので今年最後のテーマに選びました。

こんな議論を重ねつつ、これからも若い世代に期待していきます。

当然ながら「今どきの若い者は・・・」的なことは「毎年」、「何回も」、感じるわけですが、それも楽しむくらいのつもりで。

とにかく自分が新卒だったときは、考えが甘くてひどかったですから、それに比べればどうってことありません。

*********************** まとめ *****************************

組織の永続性を目指すなら、若い世代を入れ続けるべき。

*********************** あとがき ***************************

今年も終わりですね。
年末ジャンボ宝くじも今日が発表です。

宝くじに関して言えば、以前、みずほ銀行の支店長から宝くじの高額当選者の話を聞きました。
みずほはご存知の通り、旧第一勧銀を引き継いでいますから宝くじの幹事銀行です。

その支店長のお仕事の一つに、宝くじの高額当選者との面談があります。

千円や1万円なら宝くじ売り場で換えられますが、高額だと支店長が面談の上、みずほ銀行の支店でお渡しするのだとか。

つまり、支店長はこれまで何人もの高額当選者に、直接お会いになっているわけです。

当選者にヒアリングして得た、彼らが共通して言う、当たるために必要なことは・・・

「買い続けること」だそうです。
当たり前すぎますが、真実なのでしょうね。
(期待させてしまいました。すみません。)

今年一年どうもありがとうございました。
皆さんにとって、来年が良い年であることを祈ります。

そして、私自身にとっても良い年にする決意を胸に年を越そうと思います!