第6回 経営者に必要なもの(孫子の兵法をかじってみると)
- レポート
- 2003.01.06
経営者をサポートする立場である一方で、私自身、小さいながらも自らが1企業・1事務所の経営者である以上、経営者が取るべき策、態度はいかにあるべきかを良く考えます。
しかし、態度と言っても、お客様に対して、従業員に対して、・競争者に対して、と色々ありますし、 策といっても、効率を求める策、独自性を高める策、拡大を図る策、と色々あります。 これらが時間軸を伴って無限のパターンがあって、各企業の社長さんは、それぞれ独自のスタイルを展開され、どれも、常に試行錯誤されて磨き上げられていて、オリジナリティーにあふれています。
そして、経営書やマネジメント誌は、その時々で特に成功をおさめているものを、あたかも常に通用する最高の手法であるかのように取り上げます。
しかし、ブックオフで、100円コーナーに置かれた本のタイトル見てみると、これらが少なくとも妄信すべきようなものではないことがわかります。 そのため、私は、マニュアルのような本やツールも便利に使わせてもらう一方で、個々の事案には役立たなくても、上述したような普遍的なテーマに応える考え方を模索しています。
その中で、戦略を考えるに際して、よく色々な場面で取り上げられる「孫子の兵法」は、やはり示唆に富み、普遍的な考え方を示しているようです。 孫子の兵法とは、御存知の通り、戦わずして勝つ、武田信玄が引用した風林火山、彼(敵)を知り己を知れば百戦危うからず、等々の教えを示したものです。 経営に引用するに際し、これに欠けているのはお客様にどう接するのか、という視点のようにも思いますが、競争をどう考え、そのために部下とどう接するか、ということについては、確かに的を得ていて、特に将とはどうあるべきか=経営者とはどうあるべきかについて、簡潔で基本的であるが故に、自ら色々と考えさせられます。
孫子は、「将とは、智、信、仁、勇、厳なり」と、将の5条件を言っています。 そして、もう一方で 「将に将に五危あり(陥りやすい五つの危険がある)
1.必死は殺され (策もなく必死に戦うだけだと殺され)
2.必生は虜にされ(生き永らえることに執着すると虜にされ)
3.忿速は侮られ(短気だと軽く挑発に乗せられ)
4.廉潔は辱められ(潔癖すぎるとそこにつけ入られ)
5.愛民は煩さる(情にもろいと判断に迷わされる)」
とも言っていて、自分は気をつけ、一方で、敵将をこれをもって倒せ、と言っています。
つまり、5条件はもちろん重要で、かつ、それをバランス良く備えていることが重要なわけです。 勇敢なだけ、優しいだけ、ということは将としては失格ということです。
智、信、仁、勇、厳。
人それぞれ違いますし、同じ人でも、その時々によって、この5条件のどれを重視しているか(偏っているか)は温度差があって、常にバランスに気をつけるべきだと思います。 私も少し前までは「智」に頼ってあれこれ考えることが多く、決断する「勇」を持たなかったように思います。 今は、わずかながらも職員を抱え、「仁」と「厳」のバランスをどう取るべきか、考えることがあります。
これをご覧いただいている皆様も、経営者であったり、いずれ経営者となるお立場の方がいらっしゃると思いますが、この5条件のバランスを改めて自分に当てはめてみたらいかがでしょうか。
(なお、「将に五危あり」の解釈文は、本の著者ごとにさまざまで、それ同士を比べるとまったく違うことを言っていて結構面白く、上記は言ってみればその解釈の1例です。 ちなみに、筆者自身、細かいことまでは知っているわけではありませんし、深く研究されている方はたくさんいらっしゃって関連サイトも結構あります。より詳しいことを知りたい方はそちらをご覧ください。)